おとなのけんか(CARNAGE)
誰もが子供の一面を持っていると気づかせてくれる
前回は映画の紹介というより、
自分の価値観の整理のような更新になってしまい申し訳ありませんでした。
今回は冷静に映画の紹介に努めたいと思いますので、
最後までお付き合い頂けると幸いです。
日頃、言いたいことが言えなくて不満を抱えている人が見ると
なんだか心を見透かされているように感じる、そんな映画です。
邦題:おとなのけんか
原題:CARNAGE
監督:ロマン・ポランスキー
制作:2011年、ドイツ/フランス/ポーランド
時間:79分
メインキャスト:ジョディ・フォスター, ケイト・ウィンスレット,
クリストフ・ヴァルツ, ジョン・C・ライリー
豪華キャストがワンルームで繰り広げる子供のような言い争い。
子供のケンカを冷静に解決するために集まったはずなのに、
教育の方針や価値観の違いが原因で話は思わぬ方向に。。。
では、あらすじです。
あらすじ
- 子供たちの言い争いが殴り合いのケンカに発展。
加害者男児の両親が示談の為、被害者男児の家を尋ねる。 - 加害者の父は弁護士、母は投資ブローカーのキラキラ夫婦。
被害者の父は金物屋店長、母は古代文明や紛争に興味を持つ作家の平凡夫婦。 - キリ良く話がまとまったところで続きは次回に持ち越そうとするも、
お互いの言葉尻やちょっとした表現が気に食わず、何度もその機会を逃す。 - 話し合い中に何度も電話に出る空気が読めない加害者父。
他人の教育方針に介入しすぎて相手のイライラを募らせる被害者母など
それぞれの個性が見事に爆発し、話はどんどん逸れていく。 - 最終的には日頃の鬱憤が爆発して夫婦喧嘩。
お酒も飲みながら、もう敵も味方もない大口論。
当事者を交えない調停に意味はない
この映画、80分足らずの時間で良くまとまっています。
キャストも名優揃いでさすがの演技力。
それぞれのキャラが立っているおかげで、個性の違いが非常にわかりやすいです。
事の発端は子供のちょっとした言い争いなんですが、
それに必要以上に介入してしまった親同士が自分たちの未熟さを
物の見事に晒しています。
特にこの加害者側の夫婦が強烈で、本当に自分のことしか考えていません。
良く言うと素直といいますか、自分達の欲望に忠実です。
子供はおろか、お互いにも無関心で自分が思うようにできていればそれで満足。
結婚も体面や容姿を気にして相手を選んだというのがミエミエで、
思わず笑ってしまいます。
一方、こちらの被害者サイドも負けず劣らずというか、
幸せな夫婦を演じるために日頃から無理しているのが痛々しいです。
争いを好まない旦那と、自分が"普通"だと信じてやまない妻のコンビネーションは
まさにどこにでもいる夫婦そのもの。
理想像に思えるけれども、こうやって客観的に見ると違和感が凄く、
夫婦って難しいんだなぁと改めて実感させられました。
重いテーマを扱ったドラマや、頭を使うミステリーばかり見ていると
疲れてしまうのですが、そんなときに見ると少し心が休まる、そんな一本です。
加害者の父親は、「ビッグ・アイズ」でダメンズを熱演したクリストフ・ヴァルツ。
「007 スペクター」にも悪役のボスとして出演していましたが、
この人って本当にこういう人間じゃないかというくらい、おかしな男というか、
サイコパスの役を演じるのが上手な人です。
この映画、「ビッグ・アイズ」もオシャレな世界観をサクッと見れる
名画ですので、気になった方はぜひ見てみてください。
さぁ、この映画、痛快なのは最後のシーン。
ヒートアップしている両親を尻目に、当事者の子供たちはすっかり仲直り。
公園で仲良く遊んでいます。
当事者が何も望んでいないのに外部者が張り切ってしまうと空回りする、
なんだか政治でも代理戦争なんかで良く見る光景ではありますが、
「自分が何かしなければ」みたいな謎の使命感で溢れている人って
周りからしたら滑稽に映っているのかもしれませんね。
軽快ながらも、誰もが犯しそうなそんな過ちに気づかせてくれる
良い映画だと思ったので、今回紹介させて頂きました。
ただ、敢えて穿った見方をするのであれば、会話劇の完成度の高さ故に、
そのサラッとしすぎた締め括りが少し気になってしまいましたが。。。
次回はそろそろ本の紹介に挑戦してみたいと思います。
明日、時間があれば更新するので良かったらご覧ください。
子供のために、人生を減らすのはごめんだ。